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イガチョフ

貧困問題

息子が友達との会話の中で、「お前んちどこにあるの?教えてくれる」と聞かれたとき、プライバシーを盾に必死に拒否したそうだ。今はスマホでたちどころに自宅が調べられる時代だ。息子は普段からスマホやタブレットの管理を徹底しているので、友達も息子のプライバシー確保を理解しているため、それ以上は突っ込まない。適当に誤魔化しているが、無理がある。息子の通う高校は私立で裕福な子女が通う。たいていの生徒が庭付き一戸建てで自家用車を保有している。もちろん根掘り葉掘り聞くほうが失礼だが、子供とは残酷なもので、その家庭それぞれで事情があるのもおかまいなしだ。父親の職業も話題に上り、とぼけた返事で切り替えした経験があるともらす。まさか父親の職業を知らない子供がいるはずがない。「なんだったけ」こう言うのが精一杯だ。嘘をつけば更なる嘘になるだけだ。いわゆる嘘の上塗りだ。娘の高校では、自分の恵まれない家庭環境をさらけ出す生徒もいる。「私んち、母親が一人でやりくりしているんだよね」「うちは祖父母に育てられているんだよ」「私のバイト代で夕食代に当てている」など赤裸々な告白で同情を引いている。そんな時、周りの仲間は「気まず」と言って慰める。目に見えないのが貧困問題だ。我が家はスタートから生活保護であった。妻と離婚し父子家庭となった今も子供たちには日常から我慢させる場面が多い。高校時代で一番金がかかるのは、修学旅行の費用だ。去年は娘が国内で、今年は息子が海外へ行く。高々一週間の旅行で散財するのを誰も不思議に思わない。思い出作りにそんなにお金をかけてどうするのだろう。自分が卒業した高校は修学旅行がなかった。それに文句を言う生徒はいなかった。学校と旅行代理店でお膳立てして集団で旅行したところで、何か得るものがあるのだろうか。旅行は自分の投げ無しの金をはたいて行くから生きる糧になりうる。周りと歩調を合わせることでリスクを減らすことは、むしろ応用が利かない柔な人間に育てるだけではないだろうか。

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