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イガチョフ

白い日

バレンタインデーにSさんからチョコレートを頂いた。セブンイレブンのプライベートブランドの商品ではあるが、やはり嬉しい。さて一ヵ月後のホワイトデーに何をお返ししようかと考えた。スーパーにはホワイトデーのコーナーが設けられている。無難にクッキーにしようかと迷ったが、機転を利かし、行きつけの喫茶店函館十字屋珈琲のドリップバッグを購入することにした。ここの喫茶店は狸小路コミチの二階にある。カウンターとテーブル席合わせて10席ぐらいの小さな喫茶店だ。触れ込みは「北海道最古といわれる喫茶店」。函館と言えば美鈴珈琲が有名で全国展開する企業だが、十字屋は美鈴よりも僅かに早くコーヒー豆を卸していたという記録が残っている。十字屋の社長は高校の先輩に当たる。それぐらいの縁でしかないのだが、故郷函館との繋がりを持ちたいがために足しげく通っている。函館を売りにしているのだが、喫茶店のスタッフで函館出身者は一人もいないのが残念である。だが、みんな函館のことが好きなのは共通している。函館の喫茶店はなんと函館朝市の市場内にある。魚臭い市場内に珈琲の香りが漂っているのだ。これはインパクトがあり、外国のお客さんは喜んでコーヒーを飲みに立ち寄る。朝7時から昼までの営業と短時間であるが、毎朝社長自らがカウンターでコーヒーを淹れている。ホントか嘘か知らないが、以前スターバックスチャイナの副社長が一週間立て続けにコーヒーを飲みに来てくれたそうだ。名刺も置いていったと言うが、海賊商品が氾濫する中国のことだ、名刺の偽造なんて朝飯前だ。

世間知らずが功を奏して初対面の人とも臆せず話せる度胸がある自分にとって、喫茶店でくだくだするのが一番向いている。数百円のコーヒー一杯で何時間もお客の相手をしなければならないのは難点であるが、自分ひとりが食っていけるお金を得るのならこの程度の労働は無理がなくてよさそうだ。喫茶店のマスターに収まるのも悪くはないな。十字屋珈琲がSさんの好みに合うことを祈るばかりだ。

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