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  • イガチョフ

廃部寸前

高校3年生の娘は美術部の部長だ。部員数たった2名の廃部寸前の部活である。もう一人の部員も女子である。新入生が入り美術部もメンバーが増えると期待したが誰も見学に部室を訪れない。肩を落として帰宅した。今日になって放課後美術部の顧問から一年生が3人美術部入部を希望している知らせを受け胸が膨らんだ。明日の体験のために資料を用意し、道具をそろえた。小遣いから100円ショップで道具を入れるためのプラスチックケースを購入しスナックやチョコレートを用意した。デッサンの基本を教え部活動の様子を細かく説明するつもりだ。人数が揃えば活動の幅が広くなる。お互いに切磋琢磨して画力が高まりいい効果を示す。娘は工業高校建築科でデザイン力があるため、校内の設計コンペで金賞を受賞したこともある。学園祭では担任の似顔絵を描き大うけした。「パパも絵を描いてみなよ」と勧められる。画廊に出入りする自分も、見ているだけでなく描く楽しみも体験したいと思う。大丸藤井セントラルに娘と出かけ、水彩絵の具や筆をそろえたにもかかわらず一度も絵筆を握っていない。デッサンは時間をかけさえすれば描くことができるが、いざ色を塗るとべた塗りになってしまうのを恐れるからだ。水彩絵の具なので薄く色をのばさなければならないが、油絵ばかり好んで鑑賞しているので油彩のタッチが絵だと勘違いしている。絵を描く人は文章も上手いが、その逆は成り立たない。文章は書けても絵が上手いとは限らない。もちろん文章と同じで絵は描いた者がちだ。絵を見て露骨に下手ですねと批判を受けることはまずないだろう。もし批判を受けたら人間関係にひびが入ってしまう。ときどき絵を見た感想で意地悪なものがある。「確かに上手く描けていて自分にはまねできないけど、自分が描くならこうは描きませんね」というものだ。これは褒めているのか貶しているのかはっきりしない物言いだ。同じ土俵でものを言えといいたくなる。娘は卒業制作に余念がない。いい作品を残してもらいたいものだ。

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