子供たちが新学期を迎えるにあたって、もろもろの経費がかかる。何と言っても教科書代と副教材代は二人合わせて3万円に近い。一度は自己負担となり懐が寒くなるのは仕方がない。もやしや豆腐、ちくわに納豆で飢えをしのぐ。食べる物を食べないでいると空腹でいらいらしてしまう。食卓に肉も魚も上がらない日もあり、それはそれで浄化された気分で、殺生を慎む。たまに牛肉を料理すると牛臭くて味覚にあわないことがわかる。食べることは毎日のことで、良く吟味して献立を考える。人間の食料となりうる穀物を餌とする家畜を食べるのは効率が悪い。何も肉を食べないと力が出ないわけでもないだろう。我が家は菜食主義で、肉は3人でせいぜい200グラム程度だ。あとは野菜をふんだんに使う。近所に牛かつ屋があって繁盛しているが、店の前を通ると揚げ物の重い匂いが漂ってくる。これを嗅いで腹が減るとは到底思えない。匂いと食欲は密接な関係にある。ラーメン屋のとんこつの匂いを嗅げばよだれが出るし、焼肉屋の換気扇の前で白いご飯を食べるならば匂いだけでご飯が進みそうだ。だからデートで彼女が香水などつけていたら大変だ。店の人は露骨に嫌な顔をする。食事の際のエチケットを守らないとせっかくのデートが台無しである。まけまけで一日を過ごすと衣服にいい香りが付いてくる。芳香剤らしき物は見かけたことがないが、スタッフが掃除を徹底的にしているのでいい香りに包まれるのだろう。これから季節は夏に向っていく。今年も去年並みに猛暑が続くことだろう。去年の夏場に精神科の薬をやめたところ、体調を崩した。夜は一睡もできないし、異常に汗をかく。特に足の裏の汗がひどく臭いも半端ではなかった。人から「更年期障害よ」と言われ様子を見たが、匂いに耐えかねた娘の懇願で薬を再開した。次の日には症状は消え眠れるようになり汗も止まった。あの足の裏の匂いは忘れられない。周りから変な目で見られかねないほどひどかった。もしあのまま改善されずにいたらと思うとぞっとする。
イガチョフ